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林 玲のうた 手のひらに白き礫のまろきかな旅す流れに会うて研がれて

短歌ファクトリー 投稿歌  (2005/12月-2006/5月)

雨は盗人(ぬすっと) こころに開かむ花どきを寒さに先へと繰り越させおり

ひと言も洩らさぬようにと受話器もつ 手も耳も疼く焦がれるこえに

玉弾け白に桃にと枝垂れおり 花桃路(みち)にわらべの日見ゆ

明くる日は生まれかわりし女(ひと)となる 汝(なれ)が心を捉えむ永久(とわ)に

折々に届く想いの一葉(いちよう)を手のひらになぞる待ち人の筆

一粒の種携へて綿毛飛ぶいずこに落つるや生きろ生きろと

ただひとつすぅーと横切るたんぽぽの綿毛ゆくさき見送りており

一人では風の強きに堪へねども 支へ合ふ手のちから尊き

揺れ動くそんな心も愛ほしき 機微を悟るるつまが想ひは

癒やされぬ心の傷の苦しみはそのままにせぬと約す方あり

月の弦 弾いてみたら鳴るだろうか 星くず振るえて輝くだろうか

中心を覗いてみても深い穴 己がこころの影さえ見えぬ

帳(とばり)下り夜に隠るる海原の荒れる波音夢路に砕け

眠れども眠りは浅く夢に覚め夕刻の波の音に怖るる

花筏白くひっそり花ひらき庭かたすみに嫁の息抜き

そよかぜは枝葉(えだは)を透いて陽をはこぶ 白きに照り映ゆハナミズキかな

心根は戸惑い隠せぬ歌つくり 春陽降るとて未だ目覚めず 

つよ風に新芽千切れて飛びゆくよ くるくるくると竹とんぼごと

まるい月 黄色い笑顔でついてくる 独りじゃないよと話してくれる

アスパラの新芽つぎつぎ天に向かう 採りたて湯がく甘き味わい

南国の花咲く園に汗しつつ 枝を切る音の響き聞こゆる

水鏡(みずかがみ)岸辺の青を映しだし 囀り乗せて川は流るる

振るるよに散りぬる花弁の儚さよ瞼に焼きて別れ告げなむ

花吹雪く渦に呑まるる瞬く間 佇む我のなんと贅沢

舳先へと降りをる淡き花びらのやさしさ乗せて岸離るらん

風に乗り枝を旅立つ花びらはひとの想いもさらいゆくのか

残されし吾が胸に残る空しさも 桜よともにはこび去れよと

花ほつるほつれば咲くと苛つらむ花移りしはいとど早けき

ふわり降る春日の淡き穏やかさ包まれしものら揺りかごに眠る

岸辺には水面のきらめき身に受けて君すなどりし春を待ちをり

蔦の葉の壁這ふ新芽は赤らみて母屋覆ふ日想ひを馳せむ

返事なく振り向き見ればうたた寝の安らかなりし口元のあり

春日とて冷たき空気に抱かれし心もとなき脚は縺れて 

春の月繋がる友らを映しをり夜空の色のいとどやさしき

春日降り心ほどける時のあり 菜の花の群れながむるふたりの

たわいない言の葉かわすひとときを 春日差し込む窓辺に寄り添う 

菜の花の黄にうずもるるあどけなさ妻よ愛しとレンズの陰で

ふれてみるあごいっぱいの白い髭 病室のあなたなぜか愛しく

夜は更けて風に揉まるる声聞こゆ梅花に酔ふか猫の宴よ 

月明かりわが小袿と纏ふらん 川面に映ゆや白梅の舞

ストーブの音聞きしまま眠りをる 眼鏡外せば憂ひ残して

寒いとて熊笹あらふせせらぎは待ち侘ぶ春の囁きの声

紅ゐの八重に華やぐ梅の香に膨らむ蕾のなお七枝(ななえ)八枝(やえ)

声もなき…『ダイヤル』するほど勇気なく誤解の先に春は遠のき

霧雨の胸を疼かす冷たさに惑ふ指先つと握りしめ

ふぁいんだぁ横顔見つむる吾(あ)の鼓動 汝(な)が耳朶はこれを拾ふや

たが胸に頬寄せたゆたふ「ふらここ」か 汝(な)が懐にぞ吾は居りたし

重ねあひ手に伝ふうる温かみ永久(とわ)にあれよと吾が身くるほし

父が手に「匂い椿」のひと花が優しく香る 笑みといっしょに

森蔭にマンサクの黄の溢れをり そうか春だ・・と 見まわすは吾

枯れ枝を手折り日を背に屈むれば アスパラ出でて吾を待ちをり

春の月少し近くに見えるよな 隣り星よと円かに笑う

凛とする空に浮かびし雲にさへ霞かのよな輪郭を見ゆ

**********乙女椿に。。。。

ひとひらの乙女椿の開くよに 私の心ほどいてみよう

桃色のはなびらの間に見えるのは 声にならない魂の息

ひとしずく 朝露のせる一片は 悲しかった永い夢跡

ひらくからゆっくりだけどひらくから 待ってて欲しいもうすこしだけ

顔上げてあなたを見よう スプーン型の一片に乗せた 思い届けに

                            **********

湿含む枯れ芝つつく子雀らちとちと前行く 春は何処に

淡雪の凪ぐ朝風に湿立ちぬ 冬ざれの精が思い切り吸う

舞い降りるヴェールの裾野は淡くして嫁ぐ朝待つ 春告ぐる雪

手の中に点るマウスの赤い灯は眠らぬ都市の仕事を映す

温かな白いミルクに口づけて胸に広がる思い呑み込む

俯きて悴む雨に香らぬも 露、黄に湛ふや蝋梅の花

振り返るコートに雪だま当てられし 玉作る吾に はじける笑顔

踵あてつぅっと滑りすまし顔 わらべに返る束の間見ゆる 

小雀ら身をふくらませ木々の間を移る足もと 雪花の散る

眼に見えぬ虚空に散りし「吾(あ)の記憶」 雪核となりこの掌(て)の上にも

かど消えて町の景色もふんわりと静けさ包むさら雪の朝

戸惑いの指先止まるキーボード記憶昇華し虚空に消ゆる

天空を刻む幾すじ飛行機の雲が伝ふる寒気の調べ

はにかみて緩ます蕾の愛らしき乙女椿よたれに出逢はむ 

頬染めて千重にも見ゆる椿花(つばきばな)乙女心は千代に揺れつつ

白くってクリームみたいな冬の匂い鼻腔の壁を「朝だよ」と打つ

懐の抱く熾き火に竹吹いて時には吾が身燃し尽くせぬか

編み掛けのセーター手に取る昼下がり空気物憂く眺むるばかり

ストーブの音に隠れて溜め息をすうっと吐いて 気を取り直す

寒い日は白いシチューが食べたいと作る顔(おもて)に笑みの戻りて

風凪ぎて雲留まりぬ低き天 餅食べすぎの胃の腑にも似て

鐘の音にときの境は見えねども空気の変はるあらたまの春

水仙の馥郁と明くるひと朝の清々しきに幸ひなれと

静寂を破る初声ひよどりの時は紡がれひと日一日に

茶を帯びて枯れ萱覆ふ葛の葉のかさかさ鳴るは風の衣音

凝らし見ゆ星々の間に光り出づ 低き等星ひとつふたつと

氷上の回る肢体の綾なして炎(ほむら)滾るる蝶の瞬描

カラカラと枝絡みつく欅葉よ今朝の風はおまえに優しい?

ん…何かな あ…尾が出来たよ 振ってるね 青空を往くシーズーを追う

青空に溶け散る雲は「ラピュタ」のよう夢を乗せてふっと消えゆく

巻く北風(かぜ)に澄みし空さえ星姿煌めき遠くに吹きやりぬごと

北風は風船攫ひて気の道に吸い上げ行かむぐうんぐうんと

紅葉映ゆ水の輪ふたつ交わりき 嘴寄せ合ふて水鳥浮かぶ

霜降りて畑田隠さふ白妙の単(ひとへ)は煌めき陽の脚のもと

「源助」と名づけど白きふくよかな大根に染(し)む熱々の思ひ

汗拭いこころ放たる異国の地歌詠み人の横顔ぞ如何に

湿ふふむ石の畳の佇まい蛇の目差す音のいとど哀しき

宵小道仔猫らまるまり声も無き 辿る寄る辺は枯れ萱のなか

**********春を待つ 蓑虫

蓑虫のオーナメントやミモザの樹 春を待ち侘び語り合うやも

掻播きに抱かれ下がる蓑虫に寒くないかとつい声掛ける

「害虫!」と駆除駆除騒ぐ家の人移り行くにも翅も無きにて

                         **********

凛として初冬の庭に君臨す「皇帝ダリア」孤高に咲きつ

by ring_rei | 2009-02-03 23:47 | TF
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